ネット販売

某TVで某社長が
既得権益をもってる人が薬のネット販売に反対しているが、
ネット販売はどんどん進めるべきだ」
とか
「ネット販売は危険だというが、対面販売でも何をしてくれるわけでもない」
とかおっしゃってて。
案の定というか、薬剤師クラスタで反発も見られたわけですが。

とても頑張ってるお店や薬剤師があるのは分かります。
ネット販売に懸念があるのも分かります。
分かりますが、でも、薬剤師クラスタを全体的にみてると、
既得権益を守りたいからネット販売に反対してるんだろう」
と言われても仕方ないんじゃないか、という、空気みたいなものも感じちゃうんですよね。正直。

「とにかくネットには反対」とだけ主張して、エビデンスも示すことなしに
「対面でしかできないことがある」と言ったりとか。
「"薬剤師の仕事を守るために"ネット販売反対」って堂々と言っちゃうとか。
そりゃないぜ、って、格好悪いって、薬剤師側の人間の自分でも思うもん。

ネット販売は対面販売と共存不可なものじゃないんだから、
ちゃんとやってるって自信のある人はいままで通りやればいいだけだし、
月並みですが、ネット販売することを前提として、
そのうえで安全性を保つためにはどうすればいいかを考えて行かないとと思います。
実際厚労省とかもその方向で議論していくみたいだし。

「薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂に関する専門研究委員会」を傍聴してきた

2月7日に文科省であった「薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第8回)」を傍聴してきました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/47/index.htm
資料としてコアカリ案や今後のスケジュール案が示され、日本薬学会によるコアカリ改訂の作業は最終段階に入っているという感じでした。
議事録や配布資料がまだ公開されてないのであんま詳しく書きませんが(というか昨年7月の前回会議の議事録すら未公開なのはさすがに遅いんじゃないだろうか…)、気になったところをまとめます。

Outcome based education
薬剤師として求められる基本的な資質というものが、この会議からなのか、別団体からなのかよく分かりませんが、提示されています。
これ、「6年卒業時に必要とされている資質」というふうになっていて、ちょっと疑問に思っていました。
基本的な資質の中にはチーム医療への参画とか教育能力とかが含まれていて、それが大切なことは異議なしなんだけど、これらは社会人として経験を積む上で養うものであって、大学卒業時に身につけるべきものとしてはそぐわないんじゃないか、と。
でも、今回の会議で、どうやらこれらの「資質」はOutcome based educationの"Outcome"にあたるものらしいと分かって、腑に落ちました。
つまり、まず「こういう人材を育てましょう」という目標として上記の「資質」が挙げられていて、それを達成するために必要なことを教育しよう、という観点でコアカリがまとめられたらしい。

コアカリ改訂の進捗状況と今後のスケジュール
コアカリは大きくA〜Gの項目に分けられており、そのうちA〜DとGは既に案がまとまったようです。
E(医療薬学教育)とG(薬学臨床教育)も今月中にできるように努力する、とのことのよう。
(改訂作業は教員の休日返上で行われているらしいです…。)
この案が全てまとめられて本委員会で承認された後、大学等関係各所へのアンケートとパブリックコメントを募集し、コアカリの決定となるようです。
その後、各大学によるシラバス等の準備期間を経て、平成27年度入学生から新コアカリ課程がスタートするということで、委員会で承認されました。
CBTとか考えると、これで結構ギリギリのスケジュールらしい。

アドバンスト
一番時間を割いて議論された内容。
今回、コアカリの改訂は、基本的に現コアカリから内容を削減するという方向ですすめられています。
目安として分量を現在の7割程度とし、残り3割の時間は各大学の特色を生かした教育に充ててほしいというねらい。
ところが、削減作業を進める中で、分量的な問題、あるいは大学・実習施設の態勢等の問題で必ずしも実施可能とは限らないが、できればやってほしい、みたいな内容が結構出てきたとのこと。
で、それらの内容を、「コア」のカリキュラムとは別に、アドバンスト内容としてまとめて、「できたらやってください」的な項目として提示するという方向性のようです。
コアカリ以外の残り3割の時間で行う大学独自教育の参考にもなる、との認識のよう。
全体として、アドバンスト項目を設けるということ自体については委員会の了承を得られたという感じだったように思います。
(ただし、アドバンストは主にコアカリのEとFに対して設けられるようで、このE、Fのコアカリ内容がまだちゃんと出来上がってないので、アドバンスト項目の具体的な内容は別に委員会で議論されるようです。)

実習施設や指導薬剤師について
コアカリのF(薬学臨床教育、つまり実務実習)を作る上で、
「現在は実習施設や指導薬剤師間の格差が大きく問題があり、もし今のままの態勢で新コアカリも運用するならば、あまりレベルの高い内容は入れられず新コアカリ策定にはかなりの制限がかかる。
今後、文科省において、実習施設選定方法などの改善のための議論をすることを確約してほしい」
といった旨の、やや厳しい口調での主張がされました。
これに対しては、別の委員会(薬学系人材養成の在り方に関する検討会)において検討していく旨回答されました。

感想
思ったことをつらつらと。

  • アドバンスト内容の導入そのものは良いと思いました。ただ、これが「必ずやらなきゃいけない内容じゃないならやらなくていい、それより国試対策だ」とか、「大学独自教育はこのアドバンストの内容をやればいい(または、やらなくてはならない)」という風に各大学に安易な形で捉えられないよう、十分な説明が必要だと感じました。
  • 「コアカリは10年先の医療を見据えて作っている」という発言があり、好感を持ちました。ただその一方で、「せっかく大学で将来を見据えた講義をしても、実習先で現実を見せられると学生は失望してしまう」という指摘もあって、それは確かにその通りなのかもしれないけれど、実習を行うがために大学の講義内容を制限しなければならないということになるならば本末転倒だろうと思いました。大学で「進んだ内容」を講義して、実習生を通じて実習施設に刺激を与えるというくらいの気概がほしい。
  • 27年度入学生から新コアカリスタートとのことだけれど、その年からガラッと全てが変わるとなると、境目のところに位置する学生は大変だなあと。段階的に変えていくような感じになればいいんだけど。
  • CBTについては委員会で話に出て、コアカリに連動して変えていくということだけど、国試も新コアカリに連動していくのかな?
  • こういう委員会って、もっと「今日の議題は○○です」ってカッチリ決まってて、議論の後に採決したりするもんだと思ってた。とくにコメントが出なかったことをもって承認されたとみなすのだと思うんだけど、ちゃんと採決した方がいいんじゃないかなあ。
  • 委員はたぶん資料を事前に読んでない、というか配られてない。今回はコアカリの案が本格的にでてきたので、事前に配布して、ひととおり眼を通しておいてもらうべきだったんじゃないか。

コアカリについてはパブコメが出されるとのことなので、注視しておいて、ちゃんとコメント出しましょう。

「準備することのリスク・ベネフィット」を考えることは大切。でも…

もう一つ若いモンに告ぐ! 予習なんかするな!
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/massie/201301/528576.html

例えば、「脳梗塞の急患が来る」との連絡を受けて、脳梗塞の予習をしてしまったが最後、実際の患者が混濁した意識のまま、採血の妨げになるぐらい四肢を盛んに動かしていても、画像上の陳旧性小梗塞しか見えなくなる、なんてことは考えられないでしょうか。
後になって「血糖が400を超えている」との連絡を受けて、周囲の冷たい視線を浴びながら、高血糖に禁忌のグリセオールの瓶と生理食塩水の瓶を交換する羽目になってしまうというわけです。
(中略)
全国の有名ブランド研修病院を調べ上げ、自分にぴったり合った研修病院を決めるアルゴリズムも作成し、第4希望まで決定して初めて安心する。そして、そのような「周到な準備」をしていない人間に対して虚しい優越感を得る――。若い人たちに少なからず見受けられる姿ですが、そんな周到な準備が、一寸先が闇の世の中で何の役に立つのでしょうか。

急患の疾患についての「予習」をしてしまったために、他のことが見えなくなってしまう。
キャリアパスについても同様で、「予習」=「周到な準備」をすることによって、かえって準備の範囲外のことが起こった時に対応できなくなる、と言っているように読めます。

だけど、脳梗塞の予習が裏目に出得るのは、彼らが脳梗塞のみならず一通りの疾患についての知識を既に備えているからでしょう。
つまり、診療するための準備は既にある程度完了している状態です。
もしこれが研修医ではなく全くの医療の素人だったら(そんなことはありえないけれど)、他の症候を見落としてしまうリスクがあったとしても、予め脳梗塞の予習をしておいた方が良い対応ができるのは間違いないでしょう。

一寸先は闇ならば、どんなことが起こっても飄然としていられるような謙虚さが必要なのはその通りでしょう。
だからといって、「周到な準備」が不必要とか邪魔とかいうわけではないのではないでしょうか。
予習することのリスク・ベネフィットバランスを考えるべきという指摘は素晴らしいけれど、まさにバランスが大切なのであって、素人が出たとこ勝負で戦うのはちょっと怖いなあと思います。

クローズアップ現代「身近な薬の落とし穴 警告!"市販薬"の意外な副作用」を見た

もう2ヶ月ほども前の番組だけど、昨年11/19放送のクローズアップ現代「身近な薬の落とし穴 警告!"市販薬"の意外な副作用」の録画を見た。
きっかけは、OTC医薬品のネット販売が事実上解禁されたので、OTCの安全対策について見てみようと思ったから。

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3275_all.html

市販薬によってSJSやTENなどの重篤な副作用が生じる可能性があり、過去24件の死亡例も見られたことから注意を喚起する内容。
実際に副作用でSJSを発症した人の実例も紹介されていた。

メッセージとしては、

  • SJSの初期症状は眼のかゆみや発熱など特異的なものでなく、風邪とも類似しているため、患者本人も医療者も副作用とは気づきにくい。
  • 重篤だがまれな副作用は、医療者によってあまり説明されて来なかった。もっと説明されるべき。
  • 早期の治療が大切だが、診断には時間がかかることが多く、治療開始も遅れることが多い。
  • 患者にも医療者にも副作用についてもっと周知させるべき。

2番めについては、教科書とかにも「副作用を強調し過ぎると患者が怖がって薬を飲まなくなるので、全てを説明はしない」と書いてあったりするのだけど、それってもうなんかおかしくて、副作用についてもちゃんと情報提供したうえで、いざ起こった時の対応方法とか、その副作用リスクをどう捉えるかとかいうことまでちゃんと伝えて納得して薬を使ってもらうのが医療者としての責任じゃないだろうかと思う。

なんか、リアルタイムでこの番組が放送されたときは、「一般薬だけに限定される話ではない」とか言われて、Twitter上であまり評判が良くなかった記憶があるんだけど、特に大きく問題だと思うような点は無かった。
一般薬だけじゃない、というのはその通りだけれど、一般の患者にはOTCは安全なものという認識がたぶんあって、「いや、必ずしもそうじゃないんだ」という注意喚起として、意味のある内容だったのではないかと。

体罰の是非

体罰の是非については、大きく次の3つの主張があるように思う。

  1. 体罰には教育効果があるので、(部分的に)賛成・容認である。
  2. 体罰には教育効果がないので、反対である。
  3. 教育効果の有無に関わらず、体罰には反対である。

1と2は、結局、体罰に教育効果を認めるか否かという問題になるけれど、とても難しい。
まず「教育効果」の定義が困難。
勉強やスポーツの成績が上がれば良いのか。進学や就職などの実績が上がれば良いのか。
定義ができたとしても、実際に検討するのはもっと難しい。
私は医療の分野の人間なので、ヒトに対する何らかの介入の効果を測定しようと思ったらランダム化比較試験でもすればいいんじゃないだろうかとパッとは思うけれど、実際にはそんなことはできないし。
社会科学的な観察研究は結構あるんだろうとは想像するけれど。

3は、体罰は暴力/人権侵害だからダメというものなど。
教育的効果があろうが無かろうが反対という立場。
すっきりしていてわかりやすい。
ただ、これを主張しても、現在実際に行われている体罰を止める力は弱いんじゃないのかなと思う。
いま現に体罰を実施している人は、それにデメリットを上回るメリットがあると考えてやっているわけで、デメリットだけを強調しても体罰は無くならないんじゃないか。

エパデールOTC化について

勉強不足なので自分の意見があるわけではなく。
web記事のメモとして。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t193/201301/528473.html

日本OTC医薬品協会は、生活習慣病患者のうち境界領域の薬剤服用者、予備軍の薬剤未服用者のそれぞれ1%がOTC薬によるセルフメディケーションを行うことで、診療などの医療費全体を年間約2300億円、薬剤費を年間約500億円節減できると試算する。

この試算が妥当なのかどうかはよく分からないが、OTC化した後、実際の医療費節減効果はどう評価するのだろうか。
OTCのエパデールの売れた個数が、そのまま節減された処方薬の個数としてカウントされる??
評価方法がよく分からないけど、OTC化の大きな目的として医療費節減があるのだろうから、そこに対する効果はちゃんと評価して欲しい。


安全性・効果のについての対策が十分必要ということは、もちろん重要。
ルールどおりの販売ができるかどうかや、そもそもちゃんと売れるか(患者に説明・アピールできるか)というところは、薬剤師やメーカーの腕の見せ所。

「薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第12回)」議事録を閲覧

「薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第12回)」の議事録が公開されていたので、閲覧した。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/039/siryo/1328919.htm


議題は、

1. 質の高い入学者の確保について
2. 4年制博士課程教育のフォローについて
3. 今後の薬学教育モデル・コアカリキュラムの在り方について
4. 医療人養成としての薬学教育の在り方について
5. その他

気になるところに思うままにコメントしてみる。

【井上副座長】
(前略)社会に対する説明責任が極めて重要でありますので、特に受験生、更にはその保護者などに対しては各年次の進級者数、入学者に対する標準修業年限内の卒業者数、そして国試の合格者数などについても各大学が公表していっていただきたいと思う次第であります。

受験生への情報公開は是非とも進めてほしい。
母校の先生も、薬学部はたくさんあるけどそれぞれ何が違うのか分からない、と言っていた。
ここでの議論とはずれるけれど、進級者や国試合格者だけでなく、教育の特色とか育てる人材のビジョンとかももっと積極的に差別化して公表してほしい。
いまは立地とか偏差値とかしか受験生が受験先を選ぶ基準がないのじゃないかと推測している。

【井上副座長】
 今、御指摘のように入試のやり方が推薦もあり、AOもあり、一般入試もある。その中で各大学とも来年以降はAOをもっと増やすとか、多くの場合、減らすようなところが多いと思うのですけれども、いずれにしても一体どれが、どのような入試の形態をとるのが一番質の高い学生を入学させているのかとか、そういうフォローアップがあまりきちっとされていないように思います。ですので、そういうようなフォローアップを各大学がきちっと努力して、できるだけいい学生を集める方策を求めてほしいと、そういう意味でございます。

【倉田委員】
 例えばAOや推薦入試で入られた学生さんたちが、後に休学したり、留年したり、退学したりというようなことはお調べになっていらっしゃるんですか、この大学の方たちは。

【井上副座長】
 そうですね。調べています。一般的にAOや推薦入試で留年生が多い傾向は確かにある。一般入試に比べると多い。ただ、それも大学によって随分違いまして、一律にAOがだめ、推薦がだめとは言えないと思うんですね。(後略)

質の高い学生=留年しない学生、だろうか。
留年の実態が分からないから的外れかも知れないが、1年くらい留年したって、結果的に薬剤師として良い人材を輩出できればそれでいいだろうと思う。
逆に留年しなければ良いというわけでもないだろう。
そもそも質の高い入学者を確保しなければ、という話になったのが基礎学力の低下やそれによる留年率の高さが問題になったからだと想像するけれど、議論の中で学力だけでは測れない資質(やる気とかそういうもの)についても話題になっているとおり、学力や留年率だけで議論を進めて欲しくはないなと思う。

【井上副座長】
 それでは、4年制の大学院のフォローにつきましては、今、永井先生がお話になったように12月に本検討会で決定した提言に基づいて、今年の春に設置された55大学において、8月の末までに自己点検評価を行っていただいて、それが各大学のホームページにアップされております。
(中略)
理念のところにありますように、臨床研究を担うというふうにしていながら、創薬科学をも包含して、それを最重要視するというようなことで、あまり従来の大学院との差別化が意識されていないような大学も見受けられました。薬学以外の大学院修了者をほとんどの大学が受け入れております。その場合に理念、ミッションが十分に配慮されているか少し不明確な感じでございます。
(中略)

【望月(正)委員】
 最初の1ページの理念、ミッション及びアドミッションポリシーの中で、臨床研究を担うのは当然ですけれども、「創薬科学をも包含し、重要視して」とあります。どうしても創薬科学というのをある程度意識をした臨床研究というのが行われるかと思いますけれども、このあたりの棲み分けがこの文章だと少しはっきりとしない点があります。それについてはどういうような考え方でこの創薬科学と臨床研究を区別されているのでしょうか。

【井上副座長】
 本来すごく厳密に言えば6年制と4年制とがあるわけですから、4年制と6年制とが明確な差別化があってしかるべきだと、そういう議論もあるわけですが、6年制しかない大学もある。そういう大学でどういう教育をとなりますと、ある程度は許容せざるを得ないという部分もあろうかと思うんですね。ただ、理念のところ、あるいはミッションのところには、臨床研究というのが明記されているにもかかわらず、後ろの方のカリキュラムポリシーはそれとは随分違う、明確に創薬のみを考えてるとしか思えないケースがあった。創薬の内容もいろいろとあると思うんですよ。もちろんあると思うんですけれども、この視点の創薬だったら、4年制大学院のテーマだなというのをはるかに超えたようなものも中にはありまして、やっぱり少し曖昧になっていると言わざるを得ない場合もあった。全ての大学にあったわけでは決してありません。

4年制博士課程についての議論だけれど、個人的に最も気になった箇所。
「4年制と6年制とが明確な差別化があってしかるべき」だから、「創薬科学をも包含して、それを最重要視する」研究や教育はおかしい、という議論だと理解した。
しかし、そうではないと思う。
たしかに4年制博士課程(6年制卒が進学)と3年制博士課程とは棲み分けがあって然るべきだろうが、それは原則としておくべきであって、例外として創薬科学を主として研究・教育する4年制博士課程があってもいいのではないか。

6年制薬学部卒業生の中にも、創薬を担うために製薬企業の研究職や開発職に進んだ人がいる。
6年制に入った者の中にも創薬科学に興味を持つ者は一定数おり、また、創薬科学の分野に6年制教育を受けた者へのニーズがあることの現れだろう。
であるならば、創薬科学を行う大学院を用意することは自然だろう。
6年制を卒業した学生は従来の3年制博士課程には進学できない(もしそれを希望するならば、まず修士課程を修了する必要がある。)から、このような志望を持つ学生の受け皿を4年制博士課程で用意してほしい。
その上で、6+4年課程を修了した者に必要と思われる臨床研究・教育の最低ラインを示せばいいのではないか。

【市川副座長】
(前略)
一番、今回の改訂の大事なスリム化というのは、ただ減らすという意味ではなくして、先生がおっしゃるとおり、各大学の、あるいは各教員の教育に対する理念というか、そういうものをかなり含めたような形の自由度を与えるということになるかと思います。その意味で、言うなればガイドラインということであるわけです。それで、前回のモデル・コアカリキュラムも本当は7割ぐらいがそれであって、あと3割ぐらいは各大学の選任したものを使ってほしいというような記載になっているわけですけれども、どうしても最初にあって、6年制が急に始まったということもあって、先生方がSBOに注目し過ぎたんですね。
(中略)
一番大事なのはGIOであるということだと思うんですね。改訂により、一般目標のGIOの上が今回できた基本的な資質となります。それからGIOがある。そこのGIOのところをできるだけ重視するような格好に持ってくると、先生のその教育に対しての思っていることというのがずっと入ってくるのではないかということがあります。

コアカリ改定に関して。
SBOは目安で必ずしもそれらを全て教えなければならないという意味ではなかったが、SBOに重きが置かれすぎてしまった。
もう少し自由度の高いものにしていく。

【平井委員】
(前略)
医学の場合、早期体験とかで早い時期に患者さん、あるいは臨床現場に行って、そこで実際にその現場を見た学生さんたちの感想を見ると、医学を学ぶためのモチベーションが上がったという感想が出ているんですね。それで、それをもっと長くやってほしいという要求もすごくあります。
 それに応えようと思うと、また今の倍ぐらいの教員が必要になってくるとは思うのですけれども、でも、元来、医学とかはそういうものだと思うんですね。1人の患者さんがいて、その人にどういうふうに接していくかということを専門的な知識だけではなくて、そのコンテクストに依存して考えていく。

(中略)

【井上副座長】
看護の研究課題や何かを見ますと全く文系。これが同じ医療の科学、サイエンスのフィールドなのかと思うほどの課題がずらっと並んでいますよね。それを薬学が取り入れるとなると、薬学の教育というのは本当に大きく変わることになって、それができる先生がどれだけいるかということもあります。ある部分に関しては確かに看護がやっているような、ああいう文系的なカリキュラムとか、そういうのも導入、確かに具体的な対策の一案を今お聞かせいただいたという感じはします。

社会科学的な研究・教育も行なっていこうというようなことだろうか。

【井上副座長】
(前略)
少なくとも医学部の半分の先生は臨床を実際にやっておられるわけですから、その臨床の声というのは本当に学生にすぐ届くわけですね。ところが、薬学の場合にはなかなかそういうふうにはいっていないし、これから先もかなり長い時間をどうしても要するだろうと思うんですね。

薬学部の教員は臨床に出ている人は少ないから、現場の患者さんの声が学生には届かない。
大学は、今のうちから、単に薬剤師を育てるというだけではなく、たとえば将来的に薬学部教員として教育を担える人材を育てるということも見据えてやっていって欲しいと思う。

井手口直子の薬剤師Go 第2回

…を、Podcastで今さら聞いて、そのメモ。
ゲストは日大の薬局経営とかを専門にしている先生。

薬局ではしばしば、薬剤師の質問が煙たがられたり、そんなこと必要ないと言われたりする。
これは、患者に薬剤師のこのような仕事にたいするニーズが無いことの表れではないか。
ただし、今そこにニーズが無いからと言って、直ちにその仕事が不要とか止めるべきとかいうことではない。
ビジネスでは、顧客のニーズに応えることだけでなく、顧客がまだ気づいてない・自覚してないニーズを掘り起こすことも大事だとされている。
薬剤師の現行の仕事にもニーズはあるが、顧客(患者)が気づいていないのかもしれない。
そうだとしたら、薬剤師は、まず顧客にニーズを自覚させるところから始めなければならない。

ファルマシア9月号斜め読み

ファルマシア最新号が届いたのでさっそく斜め読み。
どうせ全部を読むわけではないから、さっさと読んでしまうのが良い。


韓国の薬学事情が紹介されている。
前回までからの続きらしいけど、そっちは読んでいない。(読めばいいんだけど。)
韓国では薬学部は2+4年制、というシステムらしい。
日本の4+2年制と比較されている。
とはいえ韓国の最初の2年は薬学教育ではないらしい。
ということは一般教養かな?だったら日本と変わらない気もするが。

韓国の実務実習は、1ヶ月の実習を5回行うらしい。
内訳は製薬企業、薬局、病院、臨床薬学、入院患者ケア。
最後の2つと薬局、病院実習の違いがよく分からないが、最初の薬局・病院実習をより発展させた形だろうか。
だとしたら、それも面白いかもしれない。
個々の実習を短期化して複数回行い、ステップアップしていく形。
製薬企業実習が組み込まれているのはすばらしい。

それにしても、冒頭の「学生は休学してでも海外に出ろ」は耳が痛い。


荒田洋治先生のコラム。
様々な医師との会話を紹介し(エビデンスや薬の化学構造、錠剤の形態などに気を払っていない様子が紹介されている)、薬物治療が医師だけでは行えなくなっているから専門薬剤師を充実させなければならないと結ばれている。(なぜ専門薬剤師なの?という疑問はあるが。)


東大第3代総長の濱尾新は文部大臣であり、また薬学会会員だったらしい。
どちらも恥ずかしながら知らなかった。

それじゃあMDの研究者ってなんのため?

日経メディカルオンライン
インタビュー 著者に聞く
臨床と研究の二兎を追うのはやめよう 研究者を志す若手医師への提言
『君たちに伝えたい3つのこと』 中山敬一著
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/store/review/201208/526133.html

現在、医学生に基礎医学を教える教員の多くは、農学部や理学部出身者で医学部出身者ではありません。
医学教育の根本が危機に瀕しているともいえます。
(中略)
臨床研修を終えてから研究を、という人がいますが、研修医としての経験は研究にほとんど役立ちません。
その上、医学部を出てから定年までは約40年しかありません。実際に実験できるのは15年ほど。
そのうち4〜5年を臨床で使ってしまうというのは、もったいないと思います。二兎を追っている暇はないのです。


本を読んだわけではないからよく分からないけれど、研修医の経験は研究には役立たない、と言ってしまうなら、
農学部や理学部出身者でなく医学部出身者が研究をするアドバンテージってなんだろう。
医師として現場で働いてみて、臨床で問題となっていることや教科書的な知識では割り切れないことを見出して、
基礎と臨床を行ったり来たり出来ることこそが医師として研究をすることの最大のメリットではないかと想像するのだけど。
臨床経験なんて要らない、なんて言い切ってしまうなら、そもそも研究したい人は医学部に行かない方がいいのではないかと思ってしまうんだけど。

医療者は医師の判断に追従するだけではいけない

医療ドラマの1シーンで、次のようなものがあった。
急患が運ばれてきて、医師や看護師が周りを取り囲んでいる。
早急に処置をしなければいけないが、力量不足のためか、医師は何も指示を出さない。
看護師は医師を「先生!」と急かす。が、それでも医師は動こうとしない。
業を煮やして、看護師が言った。「あなた医者でしょ?しっかりしてよ!!」



このシーンの看護師の態度には違和感を覚える。
確かに、診断や処置の指示は医師にしかできないし、他の医療従事者は医師の指示なしには動けないことも多い。
だけど、それは、判断を全て医師に丸投げして良いということとは違うと思う。
最終的な判断は医師が行う場合でも、他の医療者も判断を自分なりに行うべきだ。
それらは本当は医師にしか認められていないから、自らの判断を実際に口にだすことは基本的に無いだろうけど、
もし医師が判断に困っていたり、医師に考えを聞かれたりしたら、堂々と提案できるくらいの心づもりでいたい。
それはもちろん、看護師に限ったことではなくて。


先日、飲み会で、ある方が言っていた。
「確かに薬剤師には診断はできないけど、でも診断できるくらいの知識や技術を身につけたい。
すべての医療者が、すべての医療行為について、広く浅くでいいから知っていたほうがいい。
『私は診断もやろうと思えばできるけど、私の得意分野は薬なので、薬剤師として仕事している。
でももし求められれば医師としての仕事もできますよ。』
くらいの状態でいられればいい。」


別の医療ドラマでは、看護師の医師への言葉はこうだった。
「先生、どうしますか。
○○、準備できてます。
□□もいけます。
どうしますか。」
この看護師もたしかに医師に判断を迫っているけど、それは丸投げとは違う。
看護師自身の中にも既に選択肢は浮かんでいて、ある意味では医師に提案しているようにも取れる。


こういった働き方がしたい。

メルマガより

7月25日付けの日経バイオテクONLINEのメルマガよりメモ。

母子手帳が手元にないこともあって自分が過去にどんな予防接種を受けていて、どのような疾患の免疫を持っているのか分からないまま検討せざるを得ませんでした。
予防接種の記録と感染症の罹患歴とをデータベースなどに記録して確認できるようにするか、個々の疾患に対する抗体価を簡単に測定できればいいように思いました。
今回はたまたま黄熱ワクチンの接種を受ける目的があって予防接種外来に行ったのですが、例えば健康診断や人間ドックを受けた際に予防接種が存在する疾患に関して抗体価の検査を行い、予防接種のコンサルテーションをするようなシステムがあってもいいかもしれません。
大人用のワクチンも含めて日本国内でも使えるワクチンが徐々に増え、予防医療に対する認識も深まりつつあることを思うと、人間ドックのオプションサービスで、感染症の抗体価検査と予防接種を取り入れるというのはなかなかいいアイデアだと思いますがいかがでしょうか。

面白いと思った。
特に抗体の有無をデータベース化しておくというのは便利そう。

6年制卒は「即戦力」か

私は薬学部が6年制になって2期目の人間だ。
従来の4年制と6年制はやはり学習している内容も異なるし、その分期待の目もある。
ただ、なんとなく、その希望の仕方が違うんじゃね?と思うことも。

6年制になって大きく変わったことの一つは、(比較的)長期間の現場での実習を導入したことだ。
病院と薬局でそれぞれ2ヶ月半ずつ実習をする。
これまでは実習は一応あったけど期間も短かったので、それに比べて長期実習を経験した6年制卒には、即戦力としての期待が集まっているように思える。
これからカリキュラム改訂の時期なので、より即戦力になれるよう、臨床に即した教育の充実を訴える声もある。

でも、大学入学から6年目での戦力を比較すれば、6年制卒の学生よりも、4年制卒でその後2年間臨床経験を経た人のほうが絶対上のはずだ。
6年制卒に求められているのは、臨床の能力とはまた違うものではないだろうか。
これまでの卒業生の能力が単にバージョンアップしただけの人材を求めるのならば、6年制なんか要らない。

例えば研究能力。
例えば異業種との交流。
これまでの薬剤師とは次元を異にする何かがないといけない。
…それがなにか、って答えはまだ出ていないんだけれども。

検察審査会に疑問を呈する新聞記事を読んで

検察審査会で強制起訴された被告がこれまで皆無罪になっている、
その道のプロである検察が起訴を見送ったのだからある意味当然の結果で
だから強制起訴という仕組みは疑問だ。

という主張に疑問を感じる。

強制起訴って、そもそも、「この容疑者には刑事罰を課すべきだ」というよりは、
「捜査が尽くされていない・真相がまだ解明されてないから裁判で明らかにすべきだ」
という意味合いでなされるものじゃないの?