視野の広さ

最近「視野を広く保ちたい」とか「誰それは視野が狭くていけない」みたいな発言を良く目にする。
こういった言葉の裏には、「視野が広いのは良いこと」「視野が狭いのは悪いこと」という前提があるように思われる。
しかし本当だろうか。

そもそも視野の広さという言葉の意味が曖昧で、おそらく使用者ごとにそのニュアンスは異なっているのだろうが、
例えば研究者やそれに準ずる人に対して「視野が狭い」という言葉を使ったとすると、
それは、特定の学問分野しか知らず他の分野の事は見向きもしない、といった様子を指していると思われる。
しかし、多くの場合、その視野の「狭さ」は、ある限られた学問分野に長期間取り組んできた結果であるはずで、
その「狭さ」には、広い視野の持ち主にはない「深さ」が備わっているはずだ。
逆に言えば、視野を広く保つとは、一般的に、深さを犠牲にすることであると思う。

相対的な分類とは思うが、「視野の広い人」はgeneralistと、「視野の狭い人」はspecialistと言い換えられるのではないか。
ここまで「視野を広くする」ということを批判するようなことを書いてきてアレだけれど、
私は今のところspecialistよりはgeneralistになりたいと思っている。
ただ、それはあくまで手段であって目的ではない。
視野を広くとるということはあたかも良いことのように聞こえるし、実際大切なのかもしれないけれど、
必ずしも広い視野が狭い視野よりも優れているとは思わないし、
なにより、視野を広げることに努めたとして、その視野の広さをもって何をするかということが重要ではないか。
視野を広げること自体が目的化している人が多いように思う。